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東京地方裁判所 昭和60年(ワ)14138号 判決 1987年5月25日

原告 八木冴子

右訴訟代理人弁護士 阿部正史

被告 ソニー・プルデンシャル生命保険株式会社

右代表者代表取締役 平井龍明

右訴訟代理人弁護士 溝渕照信

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する昭和五九年一〇月二三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  訴外大智悠は、昭和五九年一〇月九日、被告との間で左記のとおりの生命保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結し、同日、第一回目の保険料として金一万二二二〇円を支払った。

(一) 保険金額 金一〇〇〇万円

(二) 保険料 特約を含み毎月金一万二二二〇円

(三) 保険契約者 大智悠

(四) 被保険者 大智悠

(五) 被保険者死亡の場合の保険金受取人 原告

(六) 災害死亡給付特約付

2  大智は、昭和五九年一〇月二二日死亡した。

3  よって、原告は、被告に対し、保険金請求権に基づき、金一〇〇〇万円及び大智の死亡した日の翌日である昭和五九年一〇月二三日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実のうち、被告が、昭和五九年一〇月九日、大智から本件保険契約の申込を受け、同日、保険料充当金相当額金一万二二二〇円を受取ったことは認めるが、被告が本件保険契約の承諾をしたとの点は否認する。被告においては、死亡保険金受取人が被保険者の二親等以内の親族とならない契約は原則として申込を受理しない取扱であるところ、申込において原告の大智との続柄が「いとこ」となっていたため照会中、大智が死亡したものである。

2  同2の事実は認める。

第三証拠《省略》

理由

一  大智が、昭和五九年一〇月九日、被告に対し、本件保険契約の申込をし、同日、保険料充当金相当額金一万二二二〇円を支払ったこと及び大智が同月二二日死亡したことは当事者間に争いがないが、被告の承諾があったことを認めるにたりる証拠はない。被告が大智に対し承諾した旨を書面で通知し、又は保険証券の交付をしたことを認めるに足りる証拠はない。

《証拠省略》及び前記争いのない事実によれば、以下の事実が認められる。

昭和五九年当時、被告においては、死亡保険金受取人が被保険者の二親等以内の親族とならない契約は原則として申込を受理せず、三親等以上の親族で経済的な結びつきがある場合等にはチェックを要するが申込を受理することもある旨の契約取扱規程が施行されていた。

同年一〇月九日大智は本件保険契約の申込をしたが、死亡保険金受取人原告の被保険者大智との続柄を「いとこ」と記載した。

被告は担当の大宮支社に対し「いとこ」を受取人とする理由を照会したが、回答がないまま経過した。

同月二二日大智は死亡した。

以上のとおり認められ、昭和五九年一〇月九日の申込から同月二二日の死亡までの間に、被告が承諾した旨を書面で通知し、又は保険証券の交付をしたとは認められないのであるから、承諾があったことを認めることはできない。保険料充当金相当額の支払によって承諾ありとすることができないことは明らかである。

二  よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大前和俊)

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